幼き思いは 雨の音色
窓に伝わる水滴を追いつつ
願いの叶わぬ寂しさの
表現の仕方がわからなくて
「つまんない」としか繰り返せなかった
変わったのはある晴れた日に
窓越しにあなたと目があってから
はじめの頃は手を振って
そのうちお見舞に来てくれて
お日様の匂いを待つようになった
ある日ぎっしり詰まった鞄から
取り出された青い万年筆と日記帳
思いを言葉に換えてゆく術を
会うたび根気良く教えてくれて
「つまんない」じゃないとやっとわかった
そしていま 病室の外へ
あなたを目標に一歩でも前へ
わたしのお外の世界は いつも
木立の切れ目から覗く青空
時折振り向く眼差しを信じて進む
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